青春は通学路に詰まっている

私が生まれ育った故郷は、一般的に言ってかなりの田舎です。路線バス沿いだった分、心底仰天されるような秘境ではありませんが、バスは1時間に1本以下、最寄り駅までは徒歩1時間、家が山の上なので駅から家に帰ろうと思うとさらに時間がかかります。

一面の畑の中に道が一本走り、ポツポツと家の集簇が散在するような集落でした。

そういうわけで、小学生の頃はスクールバス、中学生の頃は両親の送迎、高校もスクールバスで通学しなければなりませんでした。

最近になって、周りの人と話をする中で少しだけ寂しいことがあります。それは、通学路を歩いたことがないことです。

小学校の頃は歩いたって楽しいことはせいぜい川の流れやトンボの飛ぶのを見ることくらいでしょうが、中学高校になると、友達とゲームセンターに行ったりタピオカやマックを飲み食いしたり、好きな人と並んで歩いたり、漫画や雑誌を立ち読みしに行ったり…いろんな青春があったのだろうと思います。

小中の頃の通学路は、歩いたところで山道しか通りませんが、高校の通学路は今思えばそういった場所も少なからずあったように思います。

ほぼドアトゥドアの生活を送っていましたので、学校でしか友達と会わない生活が、小さい頃から私にとって普通でした。

しかし、一般的にはそれは普通ではないと、最近思います。

制服でプリクラを撮ったり、自分の欲しいと思った文房具やお菓子を自分の意思で買いに行ったり、好きな人の家にお呼ばれしたりすることも、徒歩通学であれば叶ったような気がします。

休みの日も交通が不便なので山にこもって部活の自主練を1人でやったり、読書や勉強をすることしかできませんでした。たまに友達と遊ぶ約束をしても、両親の送り迎えが必須だし、そうでなければ2時間歩くこともザラでした。

だからって今更誰に責任を求めるわけでもないですが、私の思う普通と一般的な普通は大きくズレているということがわかり、リセットしたくなるときがあるということに、最近気付いたというだけの、ただそれだけの話でした。