時間の話

子供の頃の私「大人になるのって、どのくらいかかるんだろう…

お父さんが34歳だから、えっと、あと何年で追いつくんだろう?えっと、28年か。長いなぁ。本当に長い。本当になれるのかな。

1年は365日もあります。毎日毎日長すぎるほどに長い時間を、友達と過ごしています。家族と過ごしています。毎日毎日昨日と違うことが起きて、昨日と違うものを食べて、昨日と違う気持ちで生きていて、なんだかたまに疲れるけど、次の日にはまた元気に遊んでいます。1年に1回、親戚が集まる日があって、私はそれを楽しみにしています。本当に毎年待ち遠しいです。長い、長い、まだかなまだかな。1年って本当に長い。ていうかそもそも1時間でも長い。学校は45分授業だけど、長すぎる。「1時間自由時間をあげる」って言われたらもうなんでもできそうなくらい嬉しくなっちゃいます。それが1年ともなると、もう想像もできないくらい長い長い時間なのです。でも、それをお父さんは既に34回も繰り返しているのです。

全く信じられない。毎日普通の顔して、34年も生きてきたことなんて全然すごいと思ってないみたいです。私には多分無理な気がする。34年も無事に生きていくなんて、きっと無理な気がします。自信がない。何とかなるのかな。お父さんは何とかなったから、普通の顔なのかなぁ」

なんてね。小さい頃はよく考えてました。

1年間が膨大な時間だったころ、大人になるのにどんだけかかるんだよ、長すぎるだろって思っていました。

今は1年なんてすぐです。あっという間です。

この感覚の変化には、「ジャネーの法則」という名前が付いているそうです。

6歳の子どもにとって、1年は人生の6分の1なので、長く感じます。

34歳の大人にとって、1年は人生の34分の1なので、あっという間なのです。

理屈を知ってしまえば、あの頃の不思議が興ざめなのですが、あの頃は本当に不思議でした。

10年とか20年とかっていう単位の時間を想像するだけで、何もかも諦めたくなるような途方なさが襲ってくるのです。

でも私はもうあの頃の私よりもずっと長い時間を生きています。特に何事もなく。あっという間に。それは幸せなことなのですが、特に何を努力したわけでもなくて、気づいたらこんな感じなのでした。

父もそうなのかな。

あの頃とは違う今の私が見ていても、相変わらず父はすごいけれど。