結節

ここまでの人生、私はピンと張られた糸の上を歩いてきました。たくさんの糸が交錯する中で、自分の糸を見失わないように、他人の糸と絡まないように、気をつけながら。

でもやっぱり人間は関係の中で生きてる動物なので、数多くの糸と交わり、別れ、寄り添いを繰り返しています。

 

高校生の頃、少しだけ憧れていた人のことを思い出します。学年も違ったし、たまに廊下で見かけるくらいだったので、向こうは私のことを知らないと思うけれど、私は密かに知っていました。

それ以上の関係ではないけれど、たまに思い出すことがあるんです。

 

たった一瞬交わっただけの、いや、交わりもせずほんの少し私を掠めただけのあの糸は、今頃どこを走っているのでしょう。まさか切れてしまったわけではないとは思うけど、何故だか気になるな。

決して平行ではない、できれば垂直とは思いたくない、「ねじれの関係」なんてロマンチックなものではないけれど、なんかふさわしい気がします。

別に会いたいわけではないんですけどね。

 

もう一度あの地点に戻れたらって、たまに思うんです。

そうだ、今度からは「後から戻りたくなるだろうなぁ」って思ったら、結び目を作っておくことにしよう。ゲームのデータをセーブするみたいに、後から思い出すときに見つけやすいように、でも普段は邪魔にならないように。ギュッと結んでおこう。