写実主義的な夜
すこしだけ酔って帰ってきたら
あなたの読みかけの本が
最後に読んでいたページをひらいたまま
ぽつんと机の上に置いてある。
それ以外には何もない寒い部屋
このページを読み終えて
「もうこんな時間か」
って慌てて出て行ったのでしょう。
ドアを開けて玄関から見えたその景色は
まるであなたがそこにいるかような
一抹の儚い暖かさを感じさせる。
本を手に取り 文字を追う。
そっと閉じて、本棚に戻す。
あなたなんかはじめからいなかったみたいに。
2つ並んだ本棚は
色も大きさも違うけど
「こっちが僕で そっちが君ね」
ふたりの記念日プレゼント
あなたのほうの本棚から
いちばん最初の本を取り出し
めくる、めくる、めくる、めくる
この本だけはおそろいだもんね
今日のお昼を一緒に食べたのに
もう会いたいなんて、へんなの